こちらに来ることが決まってから初めて知ったことだが、実は、ここはとても湿気の多いところです。部屋に除湿機は必須。しかも、24時間運転しっぱなしが基本とのこと。海の上に400メートルくらいの高さで飛び出ているので、これから梅雨の季節までは、雲の中で生活しているような日も多い。霧で、校庭の向こう側が見えないなんていうこともよくある。そして、私は風の島だと感じている。常に風か吹いていて、強い時は、まるで雪山のピーク付近で「一刻も早く滑り出してから休もう」という時くらいで、耐風姿勢をとらないと坂道は歩きにくい。こう言う時は、道の海側を歩かないようにしている。南の島、というと、いつもいい天気で、暖かいというイメージだが、そうでもない。結構肌寒いし、夏も風があるから、内地より涼しく感じるらしい。カヤックが漕げない、とわかった時と同じで、なぜだか、雲の中の日があっても、それほど落胆していないのが、なんだか不思議です。
さて、そんな中で、デイキャンプという遠足が行われました。1時間ちょっと歩いてキャンプ場まで。人数が少なく、見学したり遊んだりする施設はあまりなく、あっても毎年同じ場所に行くので、現地で自分たちの計画したメニューでお昼ご飯を作って食べるのがメインイベント。毎年このスタイルなので、子供たちは、自由に話し合い。といっても、内地の子供と比べて特に野外生活の経験が豊富なわけではなく、もちろん先生方も同様。ただ、デイキャンプ用の道具(鍋釜、ポリタンク、火挟みなど)は運びやすく収納されて揃っています。必要な用具は学校の軽トラで運びます。
昨年は、パスタを作ったけれど、水をたくさん使うので運ぶのが大変だったとか。カレーの年は、ご飯がうまく炊けなかったとか。
人数が少ないと、制約も少なく、子供が材料や用具も書き出して、そろえるし、前もって仕入れておいてもらうのだけれど、買い出しにも行く。話し合いの結果、決まったメニューは、チャーハン、ポテトサラダ、フルーツパンチ(「ポンチ」は缶詰の汁で作り、「パンチ」はサイダーで作るんだそう)。なんだか、炭水化物のオンパレードだけど、まあ、いいことになる。
このキャンプ場には、火山の地熱を利用した天然の蒸し器のような施設があるので、ジャガイモやニンジンはその中のカゴに入れて40分くらい置いておけば、火が通るので、ポテトサラダなどにはもってこい。ご飯も蒸すことができるみたいだけど、ちょっと時間がかかりそう。
先週行われた児童集会で、新任の先生の自己紹介の番だった私は、趣味のカヤックと山スキーの紹介をスライドを見せながら行ったので、この段階で、キャンプ好きということも伝わっていた。そんなわけで、担当は、チャーハン担当。このグループになったKは、家で料理をかなり手伝っているとのことで、彼がチャーハンを提案。米を飯盒で炊くだけなら、全く心配していなかったけれど、炊きたてのご飯をべちょべちょしたチャーハンにして台無しにしてしまうのではないか、それだけが、心配の種だった。
前年度から準備をしていた担当者は、薪ではなく炭だけしか用意していない。炭でご飯を炊いたことはないのでこれも不安。火力が出るのか?ネットで調べると、炊けないことはない様子。キャンプ場には電源もあるとのことで、一応小さな炊飯器を持っていくという邪道な保険もかけることに。
そんなことを話していると、技術科の先生が、ノコギリを使う実習で使った小さな丸太と、廃材を提供してくれた。飯盒4個分ならなんとかなりそうだ。そうこうしているうちに、上司がナタや斧を使うなら、借りてあげるよ、と地域の方を呼んでくれた。丸太を斧で割りながら話していると、その方のお宅は薪ストーブだとか。で、薪が足りないなら、と少し分けてもらい、みんなで薪割り体験。
そういえば、前任の職場でも、赴任した年の夏休みに、子供向けの「簡単アウトドア料理講座」を開催し、ナタで薪割り、火起こし、空きカンで焼き物、を子供と一緒にやったことを思い出した。一種の儀式のようです。
そんなこんなで、拾った杉の葉とリサイクルの割り箸で火を付けて、薪で美味しいご飯を炊くことができました。キャンプ場のかまどは、鉄網の高さを変えられるようになっていたので、チャーハンの時は、少し火に近くなるようにして、鉄板を置き、Kがご飯にマヨネーズを和えてから焼く、という技を提案したおかげで、ものすごく美味しいチャーハンが完成しました。さらに、地域の方から卵をいただいたので、お代わり分として、濃厚な卵チャーハンもできました。ポテトサラダもデパ地下で出せるくらい美味しく、フルーツパンチは三ツ矢サイダーのおかげでさっぱりとした味わいでした。
子供たちも大成功に満足していました。周辺情報によると、Kはキャンプをしたがっているらしい。 実現させてあげられるかもしれない。ここの子供たちは、足腰が強く、走りまわって遊んでいますが、原人体験がないのは、都会の子供と同じです。
午後は、近くで畑をやっている方のハウスで、パッションフルーツの受粉作業体験をさせていただきました。時計草の花は雌しべが3つあり、3つともにしっかり花粉をつけないと、いびつな実に成ってしまうのだとか。沖縄や小笠原でパッションフルーツって高価だなあ、と思っていたけれど、毎日午後一番の時間帯に、葉に埋もれた花を探し、手作業で受粉させる手間暇がかかっているからです。子供たちは、自分の手で受粉作業をした花に名札を付けて来ました。2ヶ月後に、収穫に来て、給食で食べられるかもしれません。
心配された天気にも恵まれ、素敵な1日になりました。オオタニワタリもたくさん見ました。